京都工芸繊維大学工芸科学部 生命物質科学域高分子機能工学部門 高分子物性工学研究室

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    「高濃度の二峰性シリカ粒子懸濁液に対する動的解析」の論文が掲載されました。

    高濃度の二峰性シリカ粒子懸濁液を解析できる「動的超音波散乱(DSS)の新手法」を生み出しました。

    当研究室では、世界で初めて、「超音波」を使って「ナノ粒子の運動状態」を「リアルタイム」で追跡することに成功しました。目では見えないナノ粒子を、光ではなく、超音波を使って見るため、懸濁液が仮に「不透明でも」中の状態がわかります。さて、粒子の大きさが光の波長よりも遥かに小さくても(1nm程度でも)、電子顕微鏡のように試料を乾燥することなく「液体中そのままの状態で」粒子のサイズ分布がわかる方法として、動的光散乱DLS法が知られています。DSS法は、この超音波版であり、民間企業でも導入されはじめている産業界における革新的技術です(図1)。

    図1. DLS法(左)とDSS法(右)の模式図。どちらの手法も試料を乾燥させることなく、液中そのままで粒子のサイズが測れます。DSS法は、超音波を使用しているために不透明な試料でも透過するのが強みです。

    次に、粒子の濃度が非常に高濃度の場合、「ビームが試料を透過できるか」に加えて、「得られた信号の解釈」が大きな課題となります。我々は、粒子の相互作用(構造因子、流体力学関数)を取り入れながら、同時に粒径分布を求める手法を開発し、粒径が一様でない多分散な場合についても使えるマルチモードモーメント手法を発表済みです(図2)。ちなみにこの手法は、DLSでも流用していただけるはずです。

    図2. モーメント展開法と呼ばれる手法で、高濃度特有の粒子間相互作用を取り入れながらも粒子径分布の評価が可能です。

    しかし以前の論文では、粒径分布の山が1つである場合に限定されていました。多分散性(粒子径の不揃い)は考慮されてるのですが、粒径が大きく異なり、例えば、ナノ粒子とサブミクロン粒子のようなサイズの差が非常に顕著な二峰性はまだモデルの構築上、大きな課題がありました(図3)。これは簡単に言えば、「相互作用」に由来する運動情報と、「粒子径分布」に由来する個々の粒子情報の「比率」をモデル設定する際に、なんと粒径分布が「わかっていないといけない」というもどかしいジレンマです。解析に必要な粒径分布は、残念ながら、これから求めたい「まだわかっていないパラメータ」なんです。

    図3. 単峰性から二峰性解析へ。運動モードの比率を出すには、本来求めたい粒子径分布が必要になるのが課題でした。

    本研究では、モーメント加算法という新しいアルゴリズムを提唱し、未知のパラメータを一才増やすことなく、二峰性粒子径分布を算出する方法を提案しました(図4)。従来のDLSやDSS研究でも二峰性のサンプルはテストされたことがありましたが、これられは低濃度に限定されます。今回決定的に異なるのは、我々はもう「サンプルを薄める必要がない」ということです。非常に高濃度の状態で、二峰性の相互作用と多分散性を同時に解く方法が見つかったので、この新手法を使えば、誰でも無希釈で粒子径解析が行えるようになったのです。詳細は、論文をご覧ください。

    図4.モーメント加算法により、高濃度二峰性微粒子懸濁液を希釈要らずで粒子径分布が求められるようになりました。

    Yamane and Norisuye et al., 2026, Dynamic ultrasound scattering analysis of highly concentrated bimodal silica suspensions, Colloids Surf. A Physicochem. Eng. Asp., 749, 141287.

    高濃度DSSの原理や、単峰性の高濃度解析については、過去の記事(DLS比較多分散性の解析法高濃度の特徴最初のナノDSS)をご覧ください。