ゲルの散乱関数解析の論文が、米Macromolecules誌に掲載されました
米Macromolecules誌に受理された論文が、2002年5月3日付けで掲載されました。
ゲルの構造は、測定時のパラメータのみならず、調製時のパラメータにも強く依存します。これは、ゲルが調整時の状態を記憶する構造凍結体だからです。このような調整時に依存した構造を小角中性子散乱により解析しました。
また統計力学を駆使したPanyukov-Rabinによって提案された散乱関数理論の妥当性も会わせて検証しました。散乱関数解析を行った結果、架橋点間重合度、相互作用パラメータなどを架橋密度や調製温度の関するで評価する事に成功しました。これまでの散乱関数理論は、非常に現象論的である上に、実験曲線の傾向すら満足に予測できませんでした。本研究では、高精度で散乱関数を再現する事ができただけでなく、それから得られる前述のパラメータも非常にリーズナブルな結果となりました。
また架橋密度の臨界閾値(CST)についても論じました。ネットワークには添加したすべての架橋が導入されるわけではありません。架橋の形成速度が鎖の拡散速度に対して十分速ければ、架橋は下の図のように、溶液中で実際に鎖が隣接しているところで導入されるわけですから、架橋される数と場所は架橋前の溶液のコンフォーメーションによってすでに決まっている事になります。

よって、導入可能な架橋数は、架橋前の高分子の状態で決まっていると言えます。本研究では初めてCSTに関する実験と理論の一致を確認しました。
Small-Angle Neutron-Scattering Study on Preparation Temperature Dependence of Thermosensitive Gels Shin-ichi Takata, Tomohisa Norisuye and Mitsuhiro Shibayama, Macromolecules 2002, 35, 4779

