カーボンブラック懸濁液の電気泳動に関する論文が掲載されました。
白金担持カーボンブラックCBは、燃料電池の触媒インキなどでよく用いられます。この粒子は、数十nmの一次構造を有しますが、単体で存在することはほぼなく、多くの場合2次、3次凝集体が含まれます。凝集体の形成は燃料電池の性能を維持するために、Nafionなどのイオノマーを添加して分散状態を改善することが一般的です。しかし、このようなインキは、分散剤である有機ポリマーやイオノマーに加えて、光を全く通さない「白金」や「カーボンブラック」からできているため、従来法ではその解析が非常に厄介でした。

Illustration by Mao Yamada
我々は世界に先駆けて超音波技術を発明してきた研究室です。その成果もあり、様々な分野の民間企業に対して学術指導や共同研究を行っています。今回は、電気泳動しているカーボンブラック粒子からの運動状態をリアルタイムで調べる研究を行いました。イオノマーは電荷を帯びているため、CBをうまく被覆していれば、電場に応じた運動が可視化できるはずです。我々の先行研究では数ミクロンの微粒子で電気泳動音波散乱(ESS)を解析する方法を述べましたが、今回は新しくナノからサブミクロンレベルのCB粒子への応用例を示しています。

Illustration by Mao Yamada
もちろん、粒子表面を解析するESS法だけでなく、ナノ粒子のサイズ分布を無希釈で評価できる動的超音波散乱(DSS)法や、粒子の硬さや粘性を評価できる超音波スペクトロスコピー(US)法を同時に適用できるため、得られる情報は1つの超音波法であっても膨大です。本研究では特に、粒子表面の親水性/疎水性の情報を得ながら、粒子を被覆するイオノマー層の厚みや量を定量化できることも示しました。